館長日記

« 子どもだって、楽しんでる大人は羨ましい! | メイン | 無力の自信 »

2007年04月25日

石水信至さんのこと

 まだ寒い頃でした。西条のまつり好きなら、誰でも知っている彫刻師にお会いする機会に恵まれました。昭和後期の新調ブームの真っ只中、新進の彫刻師として、その名を幾度となく耳にした石水信至さんです。待ち合わせ場所は石水さんの作業場。空調・換気設備が整った施設に最新の電動工具が揃っている広々とした作業場...を想像していました。
 
 場所がわからず、歩き回ること十数分。電話すると、冷たい風の中、出迎えてくださいました。訪れた作業場は四畳半ほどの部屋でした。石水さんは私たちのために電気ストーブのスイッチに手を伸ばしてくれました。「お客さんだから」と自らコーヒーをいれてくださいました。

 現在、制作中の作品は伊予三島の太鼓台。私の父が好きだった伊予三島の祭りの話をしたあと、素材が檜と欅とで異なる彫刻の話を聞かせてくれました。

 だんじり彫刻師の作業場。神聖な場所に足を踏み入れる畏怖の念と、私が子どもの頃を過ごした四畳半に似ていることへの親しみとが入り混じる時間を過ごしました。ご多用のところ、長居はいかんと思い腰を上げようとしたところ、足がしびれて立ち上がれませんでした。おかげで、さらに十数分、石水さんの話を聞くことができました。

 ひと月以上経って、石水さんに焼き鳥屋に誘っていただきました。かつて、私の父が石水さんを誘ったように私を誘ったのだと教えてくれました。来店時間が遅く、店の火をおとしているために焼き鳥は食べられず、生キャベツをつまみながら、ビールを何杯か飲みました。二人並んでカウンターに座ったのですが、もの静かな石水さんと過ごす時間はとても落ち着く時間でした。

 石水さんの作品。最新作・川沿町のだんじりを見ると、破風の竜が印象に残ります。懸魚に巻く竜の下腹はもちろん、鬼板に載る竜の背鱗にも息を呑みます。本当にこの穏やかな人からあれほど迫力ある竜が生まれてくるのかな?甘ダレに生キャベツを浸しながらそう思いました。

 そもそも、だんじりの彫刻を依頼するということは、既成のものを購入するのと違って、彫刻師の技量なり作風なりを見込んで依頼することになるでしょう。もちろん、現在の石水さんほどに実績のある方だと、だんじりの彫刻を依頼する側でも、下絵などの注文はするにしても、技量に関しては疑いの余地もなく制作を依頼することでしょう。現在の石水さんがあるのは、石水さんご自身の力によるのはもちろんのことですが、昭和後期からの「地元の彫刻師を育てよう」という発注者の意気に負うところもあったと思います。それに見事に応えた石水さん。

 私のように建造後百年以上経つだんじりを担いでいると、制作者は他にどこのだんじりを作ったのかは気になっても、制作者の人柄に関心を抱くことはほとんどありません。その点、石水さんであれば、その人柄を知って、彫刻を依頼したくなる方がいるかもしれません。

 今回の「2007アートフェスティバルin丹原」の企画に際して、石水信至さん自ら公開彫刻のお申し出をいただきました。そして、時を同じくして、川沿町自治会のみなさまから、新調だんじりの搬出・組立・展示・解体・搬入のお申し出をいただきました。自身が彫っただんじりが目の前で組まれる喜びと、自分たちが担ぐだんじりができる過程を目の当たりにして、その彫刻師と話ができる喜び。その喜びを4月30日、私たちにも分けていただけるかもしれません。

 
  

投稿者 tanbara : 2007年04月25日 02:39

西条市総合文化会館外観イメージ

西条市丹原文化会館
〒791-0522
愛媛県西条市丹原町田野上方2131番地1
TEL(0898)68-3555
FAX(0898)68-3571

月別アーカイブ

最近のエントリー